知っているようで、知らない素朴な疑問にお答えします。
地質関係
問1 |
郊外の宅地造成された土地に住宅を建てるのですがどの様な地盤調査をすれば良いのですか。 |
(お答えします)
質問は、通常の戸建住宅を台地・丘陵を造成したような宅地に建てる場合と想定されます。宅地地盤には建物が傾いたりしない十分な地耐力と、地震や豪雨で地割れ・地滑り・崖崩れ等が発生しない安定性が求められますが、その検証には、宅地地盤を形成する土の種類、分布厚さ(地層構成)、強さ、並びに地下水位等が必要です。地盤調査としては、まず造成前の昔の地形の確認が重要です。それによって盛土・切土の箇所や、概略の地層構成が求められます。次に現地の調査は、簡易的な方法から順頁に挙げますと①試掘調査,②サウンディング,③平板載荷試験,④ボーリング調査,⑤室内土質試験等であり、より詳細な地層構成と地耐力を把握します。近年みられる住宅の不具合の多くは、盛土地盤の沈下による不同沈下が原因であり、戸建住宅での地盤調査の必要性が認識されてきています。
<参考文献>
- 日本建築学会編;小規模建築物基礎設計の手引き,1988.
- 森寛;戸建住宅のための地盤調査,基礎工,Vol.25,N0.11総合土木研究所 発行,1997.11
問2 |
東京の下町低地に住んでいますが、下町低地の地盤はどの様になっているのですか。 |
(お答えします)
大昔(2万年前位)、東京湾が陸地だった頃、隅田川や荒川が流れる東京の下町の地盤は、まだ出来ていませんでした。その後、氷河が溶けて海面が上昇して現在の東京湾が出来上がりました。東京の下町の地盤は、海面が最も高くなった時に昔の利根川などの河川によって造られた三角州性の地盤で、沖積抵地と言われています。このため、山の手台地を造る古い地層とは異なり、新しい軟弱な泥や砂層(沖積層)が厚く堆積しています。層厚は厚い所では60m以上になります。また、臨海部には埋立地も数多く造られています。
厚く軟弱な沖積層は、かつては「ゼロメートル地帯」と称された広域地盤沈下を起こし、また、表層部には、地震時の液状化が問題となる緩い砂層も堆積しています。このような下町の地盤は、構造物には良好とは言い難いため、近年まで大きな建物はあまり建てられませんでした。但し、現在では建設技術の進歩も相まって幾つもの高層ビルが建ち、ウォータフロントとして再開発の著しい地域でもあります。
<参考文献>
- 貝塚爽平著;東京の自然史、紀伊国屋書店発行、1980.3
- 東京都土木技術研究所編;東京都総合地盤図Ⅰ、技報堂出版発行、1977.8
問3 |
都内の密集地で3階建ての住宅を建てるのですが、スウェーデン式サウンディングで調査したのではだめなのでしょうか。 |
(お答えします)
3階建住宅は木造、鉄骨(軽量・重量)造、鉄筋コンクリート造などの構造により大きく三種類に分けられ、その建物の重さ(荷重)も異なります。このため、地盤調査はその建物荷重に見合った支持層や地耐力を求める方法が必要となり、建築確認申請時にもそれぞれの構造に対応した地盤調査結果が要求されます。また、敷地地盤の地層構成(土の種類や調査深さ)によっても調査方法は異なります。加えて、都内の密集地とのことですから、調査機械の規模や騒音等の調査方法自体の適用性を考慮するとともに、施工に伴う近隣建物への影響(例えば、不同沈下等の発生)の有無も場合によっては調査項目として考えなければなりません。以上より、戸建住宅の地盤調査は、対象とする建物の構造や規模、敷地地盤の状況ならびに周辺環境等を考慮してその方法を決定する必要があります。なお、下表に示す他のサウンデ`インク試験やボーリング調査および地耐力を直接求める平板載荷試験等が、地盤調査項目として挙げられます。昨今、スウェーデン式サウンディング試験は住宅メーカーによって事前に実施されるケースが多くなっています。その意味では、3階建住宅の必要最低限の調査と位置付けられるようです。
<参考文献>
- 日本建築学会編;建築基礎構造設計指針、1988.1
問4 |
ボーリング 調査をする時、標準貫入試験という試験を行うそうですがどの様な試験なのですか。この試験からどの様なことがわかるのですか。 |
(お答えします)
標準貫入試験(SPT)は、図のように63.5kgfのハンマーを高さ75cmから落下した時の衝撃で、中空のサンプラー(パイプ状)を地中に打ち込む試験で、サンプラーを30cm貫入させるのに要するハンマーの落下回数(打撃回数、N値という)で土の強度を求めるものです。故に、強度の低い軟らかい土のN値は1や2と小さく、強度の高い硬い土のN値は30とか50と大きい値を示します。SPTは、1927年頃アメリカで始められ、1961年に日本でJIS規格となりました。一見、原始的な試験ですが、装置の単純さや方法の簡便さなどから現在では地盤調査の代表的な試験として広く用いられ、各機関の構造物基礎設計指針類もN値に基づいた基準・規格を制定しており、N値から地盤の支持力や変形特性を推定しています。また、阪神・淡路大震災でも話題となった地盤の液状化の判定手法においても、SPTが利用されています。なお、最近では、SPTの試験精度の向上を目指し、試験の自動化が全地連によって鋭意進められています。
<参考文献>
- 地盤工学会編;地盤調査法、1995.9
- 藤城泰行;標準貫入試験の自動化と品質管理、基礎工、Vol.25,N0.12,
- 総合土木研究所発行、1997.12
問5 |
関東ローム層(赤土)であれば、N値が3~4を越えるようであれば、杭を打たなくても直接基礎で4~5階くらいのビルが建つと聞きました。関東ローム層とはどの様な地層なのですか? |
(お答えします)
①関東ローム層の起源
太平洋をふちどる日本列島には、たくさんの第四紀の火山が分布していて、地表をおおう火山の分布は、日本列島の約2分の1を占めています.この火山灰のうちで、もっとも有名なものは、関東一円に分布する関東ローム層とよばれる赤褐色の火山灰層です.関東ローム層は、関東平原の洪積台地上のいたるところに発達し、表層の土壌化した黒土の部分をはぎとれば台地上は赤一色となります.
火山が爆発して火山灰を噴出すると、それは空高く吹きあげられて、偏西風にのって、火山を中心に扇形にひろがっていく.南関東の関東ローム層は主として富士・箱根方面の火山より由来したものであり、北関東のそれは、主として浅間・榛名・赤城・男体山などの火山にみなもとを発しています.
一方、東京西郊の多摩川沿岸には幾段かの段丘がみられます.そのおもなものは新しい層(低位)から立川段丘、武蔵野段丘、下末吉段丘、多摩段丘とよばれ、これらの段丘面にはローム層が発達し、高位の段丘ほど厚く堆積しています.また、これらのローム層は14C年代の測定等から、約2万年~40万年前の間(洪積世)に堆積したものと推定されています.
②関東ローム層の工学的性質(強度・圧縮特性)
関東ローム層は、標準貫入試験で得られるN値が比較的小さく、3~8の範囲を示すものが多いが、同程度のN値を示す他の粘性土より強度的にすぐれていることや、圧縮変形量が小さいことから、低~中層建築物の支持地盤(直接基礎)としてしばしば採用されます.
このように、関東ロームの許容支持力が大きいことは、その生成過程の特殊性にもとづくもので、乾燥の際の収縮応力、火山ガラスの風化・粘土化による膠結作用、化学作用などがその原因と考えられています.
なお、関東ロームのN値と許容支持力qaの間に、qa≒3Nなどの経験式がありますが、その信頼度は高くないため、N値のみで建築計画を行うことは危険であります.すなわち、再堆積ロームや地下水で飽和したロームなどは著しく強度低下していることがあるため、調査や試験を十分行って判断することが重要といえます.
問6 |
横浜、川崎付近に見られる郊外の崖地に住宅を建てるのですが、地震や豪雨での土砂崩れが心配です。どの様な地盤調査が必要ですか。 |
(お答えします)
横浜、川崎付近に見られる丘陵や台地は、多摩丘陵、下末吉台地と呼ばれるもので、たくさんの浸食谷によって複雑に刻まれ、周囲は急崖をなしていることが多く、神奈川県内の急傾斜地崩壊危険区域の指定を受けている地域の内、横浜市、川崎市が全体の約45%を占めています。 首都圏周辺の丘陵や台地では、土丹層と呼ばれる泥岩が基盤層を形成しています。その上には、砂、粘性土あるいは礫層が堆積しています。また、表層部は、一般に赤土と呼ばれる関東ローム層によって厚く覆われています。これらの基盤層を覆う地層(洪積層)は、自然斜面では見かけ状は安定し、数メートルの垂直な崖を形成していることも珍しくはありません。しかし、斜面に保護工などを施していない場合には、乾燥・湿潤の繰り返しなどにより、表面の肌落ち、落石や小規模な表土の崩落の危険性を常にはらんでいるといえます。また、地震時や豪雨時あるいは降雨が長期間に継続した場合には規模の大きい斜面崩壊の危険性があるため、事前に傾斜地全体の安定性を検討するための適切な調査の実施が必要となります。
そこで、一般の戸建住宅を建てる場合の調査方法としては、次のような調査方法が有用と考えられます。
①現地踏査による傾斜地の健全度の把握
崩壊の発生形態は、地盤構成などの様々な要因によって多種多様であり、その要因を含めた斜面地の健全度予測は非常に難しいといえます。
一般的に用いられている手法は、まず、現地踏査により斜面地周辺の地形・地質、斜面の形状、表流水の経路、湧水の有無、地表の植生状況の観察を詳細におこない、斜面地の健全度を予測します。
②ボーリング調査
現地踏査等により、崩壊の危険性がある場合には、より詳細な調査が必要となります。調査は、ボーリング機械により実際に地中を掘削する方法が一般的に多く用いられています。この調査により、地層の分布状況、地下水の状況、地盤の強度等を詳細に把握することができるようになります。さらに、これらの地盤情報をもとに、 斜面の安定解析をおこない、崩壊の危険度をより正確に予測することが可能となります。
問7 |
新たに宅地造成された土地は地盤沈下が起こると聞きますが、どの様なことが地盤沈下の原因になるのですか。 |
(お答えします)
宅地造成による地盤沈下は、一般に、地盤の軟らかい土地(「軟弱地盤」という)に盛土(載荷)したときに起こります。
地盤の軟らかい土地というのは、大きな平野や沼沢地などの低湿地、台地や丘陵地の谷などの湿地であることが多く、通常、地質年代の新しい土層、いいかえれば、水を多く含む軟らかい粘性土(粘土、シルト)や、植物の遺がいを多く含む高有機質土(ピートなど)などが堆積しているところといえます。
また、「湿地」と呼ばれることから分かるように、じめじめして水気が多く、地下水位面が地表面近くにある(「地下水位が高い」という)ことが特徴です。
このような地盤は、地質年代的に見てとても"若い"ため、まだ十分に固まっておらず、まるで"豆腐"のように沢山の水を含んでいます。
この"若い地盤"に宅地造成(主に盛土)をしますと、豆腐の上に重いものを載せた状態になりますので、重力により中の水がしぼり出され(「重力排水」という)、地盤がある程度の堅さになって応力的に釣り合うまで沈下が進行します。
これが「圧密沈下」と呼ばれる現象で、通常の地盤沈下の大部分を占めています。 その他に、圧縮、破壊、流動化、広域地下水位低下などに伴う沈下もありますが、それらはやや特殊になりますのでここでは取り上げません。
「圧密沈下」は、圧密層(圧密沈下の起こる軟弱な土層)の厚さや排水条件等にもよりますが、かなり長い時間をかけて進行する物理現象ですので、何も対策を行なわなければ、宅地造成が終わってもしばらくは沈下が続くのが普通です。このため、社会的にも経済的にも大きな問題になるといえます。
なお、新規の盛土では、盛土材料と施工技術(締固め)の問題とはいえ、盛土自体の沈下もありますのでこの点に関しても注意が必要です。
以上をまとめますと、地盤沈下の原因(要因)は、次の3つに集約されます。
①地形的要因(低湿地、高地下水位)
②地質的要因(軟弱粘性土、高有機質土、不適当な盛土材料)
③工学的要因(盛土の応力、圧密沈下現象、不十分な施工技術)
以上の要因を含む地盤沈下の諸問題を解決するために、通常は専門の業者が計画を立てて、地盤調査(ボーリング)、原位置試験、土質試験(圧密試験など)を実施し、その結果により圧密沈下検討および対策工法の検討を行い、それに基づいて施工(対策工)を実施します。
問8 |
沖積低地、洪積台地という言葉を良く聞きますが、それぞれどういう地盤なのですか。 |
(お答えします)
日本は狭い国土と独特の地質条件を反映して関東平野や大阪平野、または京都盆地や山形盆地など、第四紀とよばれる極めて新しい地質時代に形成された平野部や山間盆地に都市が発展してきました。
この第四紀という時代は、約45億年といわれる地球の歴史ではほんの一瞬ともいえる200万年くらい前から現在までの期間をいいます。地質学的にはその第四紀のさらに最後の約1万年の期間を完新世とよんで細分しており、それ以前の時代は更新世と呼んでいます。第四紀は更新世と完新世からなるわけです。
ここで設問にある「沖積低地」とはいわゆるが地盤の表層を構成している低地のことで、「洪積台地」とはからなる台地のことをいいます。 このうち沖積層は第四紀末の更新世後期の最後の氷河期(ウルム氷期)の最盛期=当時の海面が最も低下した時期、約2万年前=ごろから完新世にかけて、徐々に海面が上昇するにつれて堆積した地層のことで、地質時代の上でも極めて新しい時代に形成された地層です。そのため、沖積層の多くは粘土や砂、礫などの未固結の土でできており、非常に軟弱で水分を多く含んでいます。その結果、地盤沈下を生じたり、地震時で液状化したりと人間が生活し活動する上でしばしばやっかいな問題を生じさせています。沖積層は海岸平野や台地内の川沿いの低地などいろいろな場所に分布しており、その厚さや土の種類も変化に富んでいます。東京の下町低地では40mをこえる厚さで軟弱層が分布する場所もあります。
一方洪積層は、更新世に堆積して形成された地層です。沖積層よりも形成された時代が古いことからそれよりもかたく、締まった地層が多く、工学的な意味あいでより安定した地層とされています。日本の台地は河岸段丘や隆起した扇状地が多いので、地形的には何段もの段差が認められることが多く、地質の上では砂や礫からなる段丘堆積物が分布している場合が多い点が特徴です。関東地方や東北地方の一部ではこれらの段丘堆積物をおおってロームとよばれる火山灰起源の粘性土が厚く堆積しています。
このように我々が日常生活し、活動している地面の下は実はいろいろなタイプの地層でできています。したがって、建物をたてたり、地下鉄や道路などをつくる場合には、充分な調査をしてその性質を明らかにしないかぎり、危険のない、また無駄のない設計や計画がたてられないといえましょう。そこに我々の業界の活躍の場が見いだせるというわけです。
問9 |
土丹層という言葉を良く聞きますが、どの様な地質なのですか。 |
....
只今回答を準備中です。
問10 |
東京湾横断トンネルが完成しましたが、どの様な地盤の所を通っているのですか。また地震の時でも安全なのですか。 |
....
只今回答を準備中です。