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おすすめ図書

「宇宙には意志がある」

桜井邦朋著 クレスト選書 1,600円
梶谷エンジニア株式会社
調査部 城谷直行

 本書は物理学の発展の歴史を通して、物理学が、宇宙や人類の起源と進化の解明に、そしてその終焉の予測に大きく貢献していることを"物語風に"解説しています。
 実のところ私は物理学が大の苦手で、物理学というのは、自然現象を理解するためにむずかしい数式に埋もれなければならない堅苦しい学問、と思っていました。ですから、タイトルに惹かれて本書を購入したものの読むことに抵抗を感じていたのですが、読みはじめてみると著者の巧みな文章力と内容の豊富さに知らず知らずに引き込まれて、気が付いたときには完読していた次第です。
 本書は、学校教育のように数式偏重ではない"物理学の楽しさ"を教えてくれます。この本を読むと、私たちの仕事も数式備重になってはいないだろうか、などと考えさせられてしまいます。

土質力学

石原研而著 丸善株式会社
応用地質㈱技術部土質技術一課
山田敏博

 土質力学の教科書を最後まで読み通そうとして挫折したことのある人は案外多いのではないでしょうか。私も本をかえたり何度か挑戦しては失敗を繰り返しました。そんな時に教えてもらったのが、ここで紹介する石原研而先生の「土質力学(丸善)」です。
 この本は、まず第一に内容が絞り込んであってコンパクトなのが魅力です。読み通せそうな予感がします。また「なるほどこういうことだったのか」と思えるような解説が随所にあり、今までもう一つ納得できなかった点が、今ではわかったような気になっています。すべての教科書を見くらべたわけではないので、他の教科書には申し訳ないのですが、私にとっては相性のよい一冊でした。興味のある方はだまされたと思って試してみてはいかがでしょうか。

応用地学ノート

武田裕幸十今村逮平責任編集 共立出版  9,270円
(株)ダイヤコンサルタント東京事業本部
恒川 勝

 この本は地形・地質・海洋・環境など応用地学分野の幅広いコンサルティングとその実務的ノウハウを経験豊富な専門家(90名)がコンパクトにまとめたものである。第Ⅰ部では都市部の地盤・地下水・都市防災・活断層・地すべり調査など(23事業)を、また第Ⅱ部ではコンサルティングに必要なデータ収集方法と現地調査の要点を、第Ⅲ部ではリモートセンシング・GlS・シミュレーション・統計解析などの解析技術を簡潔に解説している。
 なお巻末には地形図・空中写真・地質図・地盤図等の入手先を紹介するなど、関係者必備・必携の書といえる。
 本書は従来の教科書的な専門書とはひと味ちがい、プロの目をとおしたコンサルタントとしての、物の見方・考え方・アドバイスが項目ごとに盛り込まれているため、次の利用法が適している。
 入社3~7年生(プロの卵)が業務計画書・現地調査・報告書作成をする際のポイントの確認や専門家(プロ)となるための参考書として利用する。
 ある分野の専門家が専門外の業務を実施する場合にどんな点に留意して業務にあたればよいかを調べるために利用する。
 読者が専門とする事業分野や業務で必要とする分野を先に読み、次に関連分野を読むことにより、広範で総合的な技術を習得する。
 10ぺ一ジにおよぶ目次、3700語の索引や小見出しの多い編集により、多忙な読者が必要事項のみを拾い読みできるように配慮されている。
 本書は多岐な分野を一冊にまとめるために、教科書的な図表や工学的な詳しい説明を簡略化し、参考文献で示す努力をしている。欲をいえば、そのまま報告書に転用できる図表をもっと入れてあればなお好都合であった。将来性のある若い技術者はもとより、技術の幅広さを求められるベテラン技術者の「座右の書」として推薦したい。

魍魎の匣(もうりょうのはこ)

京極夏彦/著 講談社 1,400円
応用地質株式会社技術部地質技術課
佐々木達哉

 科学の歩みは益々加速されてきているにも関わらず、近年特に若年層がオカルティック(神秘主義的)なものに依存する傾向は、むしろ強くなっているように思われる。
 本書は日本古未のオカルトの代表である「妖怪」というモチーフを全面に押し出した、精緻を極めた驚天動地のミステリである。しかしながら本書の中で著者は、主人公である中禅寺秋彦の口を借り、「世の中には不思議なことなど何ひとつないのだよ」と、現在の科学の水準て解明できないものに対して、神秘主義を持ち出すことに対して厳しい批判をしている。理解不能のものに対して前向きの判断停止をする勇気のない者にとって、オカルトは余りに甘い誘惑であるということなのだろう。
 翻って我々が日常行っている仕事において、はたして我々は科学的な思考のもとに、常に論理的に判断をしているだろうか。オカルトを笑う前に今一度考えてみては如何だろう。本書はそんなことを考えさせてくれる一冊である。

Fundamentals of Behavior(John Wiley&Sons,lnnc.)

Second Edition
James K.Mitchell
応用地質株式会社東京事業本部東京事業部技術部
副部長田中一朗

 今までに出版されている土質工学の参考書は、「土がどんな挙動をするか」に説明の主眼が置かれています。通常はこの理解で地盤工学間題に対処可能です。しかし、長いコンサルティングワークの間には、「あの土は何故あのような不思議な挙動をするのか」を理解することが重要になる場合があります。
 この本は、「何故土がそのような挙動をするのかと言う面に力点をおき、土の工学的性質を決定づけている囲子について理解すること」を目的に書かれています。初版は、1959年に著者の勤務する大学で始まった大学院課程の授業内容をもとに1975年に出版されました。その後、16年間の研究の蓄積を経て、第二版が1993年に刊行されています。
 主な記載内容は、結晶構造と表面特性、土の鉱物学、土の生成と堆積、土の組成の決定法、土と水、粘土と水の電気系、土の組織とその測定法、有効応力・粒状間応力と全応力、土の組成と工学的性質、土の構造(生成、安定、性質)、伝導現象、体積変化挙動、強度と変形挙動、等です。これだけ見ても本書が他の土質工学の参考書と一線を画していることが分かると思います。第二版では、年代効果や環境変化による土性変化についても考察されています。
 土質工学を基本的な地平から見渡し、間題を解決していこうとする技術者にお勧めの一冊です。

物理数学の直感的方法

長沼伸一郎/著 (株)通商産業研究杜 1,545円
川崎地質株式会社関東支社技術部
結城則行

 本書の序および後記を読むだけでも、我々が大学の教養課程当時に受けた数学の講義を通して心に抱いていた疑間点が浮き彫りにされるように思う。
 理工系の学生が専門課程に移行するにおいていかに基礎数学が重要であるかの点について、我々いや少なくとも私は疑間を残しながらも深く、また自分なりにその現象を理解しようとして学んだことはなかったように思う。本書はそれらの点を著者なりに咀嚼して10項目について解説している。
 特に積分関連、フーリエ級数・フーリエ変換等に関しては著者独自の論法で現象をわかりやすく解説しており、なるほどこういうことだったのかと改めて納得のいく事項も見つかるものと考えられる。

コーヒーブレイクにでも機会があったら一読してもらいたい。

羽田空港物語

上之郷利昭/著 講座社 1,600円
日本旅行作家協会会長
斎藤茂太先生推薦
「滑走路の下に、こんなドラマがあったのか!」
誰も知らないうちに こんなすごい事、やってのけていた 大東京の街のこんな近くで、ヘドロの海に挑み 大空港を建設した寡黙だが誇りに満ちた技術者たちがいた

国造りに匹敵する空港づくり 世界に誇る羽田空港には、 とてつもないドラマが隠されていた。
この空港は、へドロの海から 造り上げられたものなのだ。
まさに、国造りにも比すべき大事業である。
本書は、その国造りに敢然と挑んだ 技術者たちの奮闘ぶりを 余すところ無く伝える。
 私と羽田とのつき合いは昭和6年からだからすでに65年を超えた。その間、羽田は何という変容ぶりだろう。
 私は6から500へと表現する。私が初めて乗った旅客機が6人乗り、そしていまはジャンボが500人の客を運ぶ、という意味だ。本書はわが愛する「羽田」の「6から500」を支え、造りあげてきた技術者たちの汗と誇りを描いている。「羽田」の発するもうひとつの「文化」がここに凝集している。

東京湾の地形・地質と水

貝塚爽平/編集 築地書館 2,900円
日本物理探鍍株式会社技術本部
佐久間勝治

 本書は、東京湾の成立から開発が進んだ現在の姿までを、最新の資料に基づいてまとめたものです。内容は、東京湾とその周辺の地形・地質、東京湾流入河川の水文、東京湾の海洋物理および堆積物といったところです。
 「東京湾」「地形,地質」「水」それぞれの分野について、多くの書物が刊行されていますが、本書のように総合的に記したものは少ないと思います。本書は専門書として読んでも、また一般向けの書物として読んでも興味深いものがあり、一読をすすめる次第です。
 タイトルからは、東京湾というローカルな地域を対象としているように感じられます。しかし、読み進むにしたがい、東京湾をとりまく関東平野や関東山地の生い立ちと発達、利根川・江戸川・荒川・鶴見川などの変遷、新旧の堆積物、埋立などによる人工的な地形の改変、環境・公害問題など、他地域にも通じる広城的な視点で記述されていることに気づきます。
 また、東京湾周辺地城の地形・地質・水文・環境に関する新しい資料が充実しており、地質技術者の実務に役立つ図表が数多く掲載されています。