知っているようで、知らない素朴な疑問にお答えします。
防災関係
問1 |
水害が起こると「鉄砲水」という言葉を耳にします。文字からイメージ的にはわかりますが、どの様にして、どの様な場所で起こるのですか? |
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只今回答を準備中です。
問2 |
梅雨や台風などの多い時期に、山地で地すべりが発生し、家屋や人名が失われています。地すべりは、どのような場所で発生しやすいのですか?また、どのような地すべり対策が行われているのですか。 |
(お答えします)
地すべりは、斜面運動の中でも規模が大きく、比較的緩い斜面(20゚前後)を有する土塊が、あるすべり面を境に緩慢に移動する現象です。
地すべりは、地すべりを起こしやすい地形や地質・地質構造の素因のあるところに、降雨などの自然現象や人為的な地形の改変が引き金(誘因)となって発生します。したがって、地すべりは、特定の地質や地質構造のところに発生しやすく、その多くは過去に地すべりや地すべり性の崩壊を起こしたことのある、いわゆる地すべり跡地で、それを示す地名や伝説が残されているところも多いといえます。
①地すべりが発生しやすい地質(地質的素因)
地すべり発生地の多くは泥質岩の分布地で、地すべり粘土の生成と深く関わりあっています。地すべりと地質分布の関連から区分すると、
- 東北、北陸、山陰、北九州などの日本海側の丘陵地域に分布する第三紀層の泥 岩・凝灰岩等の分布地(いわゆるグリーンタフ地帯)
- 四国から紀伊半島をほぼ東西に走る中央構造線の南側に帯状分布する結晶片 岩・千枚岩などの地域
- 主な火山地帯で火山変質作用によって温泉余土化した岩の分布地域
②地すべりを発生しやすい地質構造(地質構造的素因)
層理面や割れ目などの地質的な弱層の方向が流れ盤となっている地域や、断層や破砕帯の分布する地域、褶曲、特に背斜軸に沿う地域やドーム構造やキャップロック・貫入岩周辺地域などで地すべりが発生しています。
③土地利用と地すべり
地すべりはほかの山地部と比べると、なだらかで水に恵まれ、土地が肥沃であることから、古くから耕地や水田として利用されてきました。それらは小区画の傾斜地水田が多く、「千枚田」「棚田」などとよばれています。地名としては、ずり・ざれ・すべり・ぬけ・くずれなど地方独特の呼び方があり、伝説として残されているところもあります。地名や伝説から地すべり発生地の可能性を探ることもできます。
④地すべり対策について
地すべり対策工は、その素因と誘因から発生機構を考察して、その原因を取り除くように選定しますが、除去不可能な場合もあり、この場合は地すべり力に対抗するような構造物によって対策を行います。いずれの場合にも地すべりから何を守るのか、その防止の目的によって対策工を選定することが大切です。
対策工の種類は、抑制工と抑止工に大別され、これらを単独あるいは併用して地すべりに対抗しています。
抑制工:地形や地下水などの自然条件を改良して地すべりを安定化させる工法
(排土工・押え盛土工・河川構造物・地表水排除工・地下水排除工)
抑止工:人工構造物により滑動力に対抗しようとする工法
(擁壁工・杭挿入工・シャフト工(深礎工)・アンカー工)
問3 |
ハザードマップという言葉を聞いたことがありますが、どのようなものなのですか?一般の人でも見ることができるのですか? |
(お答えします)
ハザードマップ(hazard map)とは、災害予測図・災害危険個所分布図ともいわれるもので、火山災害や洪水災害などに対して危険地域を予測して、それを示した地図のことです。洪水ハザードマップ・洪水氾濫危険区域図・地すべり危険区域図・液状化予測図・火山防災マップ、地震被害予測図など、それぞれの災害の種類や表示したい内容によって様々なものがあります。
本図は、過去にあった災害の原因や被害状況、被害を拡大させる要因等の解析に基づき、どのような地形・地質・植生・土地利用などの条件のそろった地域が危険か判定し作成します。また、避難経路・避難場所の明示や災害規模縮小のための対策なども盛り込まれているものもあります。
各官庁で作成された例は以下の通りです。
- 土砂災害危険個所マップ:建設省と都道府県
土石流危険渓流・傾斜地崩壊危険個所・地すべり危険個所
- 洪水氾濫危険区域図:建設省と市町村
災害時の状況、避難地、避難経路の位置等
- 火山災害予測図:国土庁と各地方自治体、
噴火落石・火砕物降下・火砕流等による被害の程度と範囲
各種のハザードマップは、各地方自治体の防災担当箇所で入手や閲覧できますので、窓口でご相談ください。
問4 |
各地の臨海部で埋め立てが行われており、数多くの建物が建っていますが、埋め立て地における災害に対する安全性は大丈夫なのですか? |
(お答えします)
各地の埋め立て地は、一般的に「建造物の基礎地盤として十分な地耐力を有しない地盤」
*と定義されている軟弱地盤であるゆるい砂質土、軟らかい粘性土によって形成されており、このような地盤に建物を構築するには次のような問題があります。
- 安定問題
- 沈下問題
- 液状化問題(地震時に生ずる)
- 地耐力問題
そこで、これらを解決するために、種々の軟弱地盤対策を行っています。対策方法として、
- については、地盤強度増加、安定が保つことのできるノリ勾配にする方法等。
- については、建物が構造する前に沈下を終了させる。地盤を締め固める方法等。
- については、地下水位を低下させる。地盤を固めるまたは締め固める。水圧を抑制・消散させる方法等。
- については、良好な基礎地盤まで杭基礎にする。構造物の底面積を拡大して地中応力の低減をする方法等。
を実施しています。以上の対策方法を活用することによって、災害に対する安全性を確保しています。
*「土質工学用語辞典」より引用
問5 |
土石流とはどのようなとき、どのような場所で発生するものなのですか? |
(お答えします)
土石流は山津波、山潮、鉄砲水などと呼ばれていましたが、現在ではむしろマスコミを通じて「土石流災害」という用語が一般的になっています。土石流はその名前のとおり、水を大量に含んだ大きな土塊が渓流内を相当なスピードで流下する現象で、山腹斜面に生じた崩壊土石や渓流に堆積した土石があることと、水の供給が発生の要件となっています。
つまり、①どのようなときに発生するかは、水が供給された時、
②どのような場所で発生するかは、山腹斜面に生じた崩壊土石や渓流
に堆積した土石があるところといえます。
① 水が供給されれた時というのは、土石流発生事例からみると、多くの場合豪雨の最中で、その雨の最も多い時を中心に発生しています。豪雨時以外にも、融雪時や、降雨と融雪が関連した時にも発生しています。
また、活火山の山麓で火山灰の降下堆積により雨水の浸透が妨げられることにより発生したり(火山泥流)、山腹崩壊や地すべりをきっかけに発生する場合があります。いずれも降雨と関連がありますが、降雨と関係なく地震に伴う斜面の崩壊が土石流を発生させることもあります。これは、崩壊土砂が渓流を一時せき止めて天然ダムを造り、これが崩壊流下することにより土石流化するものです。
② 土石流が発生する場所については、勾配が15~20゚以上の渓床や山腹が発生源で、そこから流下して勾配2~12゜(最ひん値6゚)の区間に停止堆積するまでの区間といえます。
土石流が発生しやすい条件を備えた渓流とは、
・山崩れが発生しやすい山地内にあり、
・渓床勾配が急な区間(20゚以上)が上流にあり、
・そこに堆積土砂が大量かつ不均一に分布している渓流、といえます。
一般に山間部の小扇状地は土石流によって形成されたものが多く、特に山麓の谷出口にある小扇状地で、流路が扇面を深く掘り込んでいないものは、まだ形成過程にあり土石流の堆積を繰り返す可能性が高い場所といえます。
土石流の発生する場所は過去に何度も土石流が発生していることが多く、古い土石流堆積物分布図を作成すれば、土石流危険区域図となり、また、それぞれの土石流発生源を示せば土石流発生危険渓流を示すものになります。
問6 |
日本の各地で崖地の崩落事故が起きていますが、地質調査をすることで崩落事故を予測したり、防ぐことは出来るのですか。 |
(お答えします)
崖地の崩落は、一般に崖崩れと呼ばれ、急斜面の土砂や岩塊が突発的にすべり落ちる現象です。崩落事故に対する合理的な防止策をたてるには、崩落の場所、時期および規模の予測を行う必要があります。
地質調査では、付近での過去の崩落事故歴を調べ、斜面の勾配、不安定な土砂や岩塊の存在などを現地観察し、崩落の危険性を判断します。また、ボーリング調査などの手段で、崩落しやすい土層の厚さや硬さ、地下水の状態などを詳しく調べ、崩落の規模や対策の緊急性を判定します。 さて、おたずねの件についてですが、このような地質調査の実施は、崩落事故の予測や防止に対して、非常に効果があります。しかし、崩落の時期や規模を完全に予測するためには、残念ながら現在のところ限界もあります。
崩落事故の危険個所が選定された場合、完全な防災工事を施すということが最も望ましいのですが、現実的には難しい問題もあります。考えられる手段としては、地盤の異常な動きを検出する色々なセンサーを斜面に設置して、できるだけ早期に警報を与えるということがあります。また、崩落には事前現象があらわれることもあるため、周辺の住民や関係者による普段の注意が非常に大事になります。
問7 |
トンネルの崩落事故を耳にしますが、関東周辺のトンネルは安全なのでしょうか? |
(お答えします)
これは北海道・豊浜トンネル崩落事故の場合のように、大きな社会問題にもなっており、回答は非常に難しいのですが、建設省道路局による「岩盤斜面等の緊急調査(平成9年12月)」 の実施結果から述べますと。
平成9年度から対策を実施中の箇所をあわせ、岩盤斜面の危険性が比較的大きく、 早期に岩盤斜面の安定などを図る必要がある箇所が、関東地方を含めて全国で約540箇所あげられました。
また、対策に着手するまでの間、監視・管理の強化などを図るとされています。
このように崩落の危険箇所については、早急に対策が施されることになります。しかし、トンネル崩落事故を未然に防止するには今後とも、 すべてのトンネルについて日常の点検や監視を続けると必要があります。また、崩落の地質的メカニズムの解明を目的とした調査研究が不可欠です。
問8 |
国の機関で国道の道路防災点検を実施中との記事を新聞で知りましたが、どの様な点検をどの様な目的で行うのですか、教えてください。 |
(お答えします)
おたずねの道路防災点検とは、道路の防災のための基礎資料を得るために、全国一斉に実施する総点検と位置ずけられます。
この道路防災点検は、昭和43年に起きた飛騨川バス転落事故を契機として開始し、最近ではおおむね5年ごとに実施しています。国道については建設省が主体となって実施しており、 道路災害の可能性や対策の必要性を明らかにすることを目的としています。また、日常点検もあわせて実施しています。
点検対象の主な項目は以下のとおりです。
①落石・崩壊 ②岩石崩壊 ③地すべり ④なだれ
⑤土石流 ⑥盛土 ⑦擁壁 ⑧橋梁基礎の洗掘
点検には、地質・建設コンサルタントなど、十分な経験を有する技術者が現地調査に当たります。現地調査とともに、空中写真撮影・各種センサー・GPSなどの手法が活用されます。点検の結果は防災カルテにとりまとめ、その後の監視や対策に役立てます。
問9 |
斜面の崩壊には表層崩壊というのがあると聞きました。ふつうの崩壊とはどのように違うのですか。 |
(お答えします)
斜面の崩壊とは、斜面上の表層堆積物や風化物質が安定を失って突然崩れ落ちる現象であり、 山崩れとほぼ同じ意味です。斜面の崩壊は、一般に次のように分類されることがおおく、 おたずねの表層崩壊は、斜面崩壊の一種であるといえます。
[斜面崩壊のおおよその分類]
a.表層崩壊 b.堆積物や強風化物の崩壊 c.基盤岩の崩壊
表層崩壊は、表層の軟弱な層と地下の固い層との間に不連続面があり、その面を境界として表層の軟らかい層が崩壊するものです。原因は、地震や豪雨をきっかけとして起きることが多いのです。表層崩壊は、一つ一つの規模は小さく、 崩壊の深さも数10cm~2m程度ですが、崩壊の中では最も多く発生するものであり、発生数の非常に多いことが特徴です。
ちなみに、堆積物や強風化物の崩壊は、表層崩壊よりも崩壊規模が大きく、また基盤岩の崩壊は、崩壊の発生位置が基盤岩のなかにある崩壊であり、崩壊規模には大変大きいものがあります。