技術ニュース86 CPT
(新人)課長,お客さんから「CPT」って訊かれたのですが,CPTってなんですか?
(課長)いろいろ呼び名はあるけれど,今は電気式コーン貫入試験って呼ばれている調査方法だね。貫入時の抵抗や間隙水圧,周面摩擦などをコーンに内蔵されたセンサで電気的に連続して測定する方法なんだ。
(新人)なんだかハイテクですね。
(課長)センサを使って電気的にデータを取得するからそんな気がするのかな。でも,30年以上前から実務で使われていたんだよ。
(新人)私の生まれる前ですね(笑)。
(課長)今でこそコンピュータが普通になって簡単になったけど,当時は正直大変だったんだ。データを記録する方法も,最初の頃はデータロガーから出てくる紙に印字されたものを持ち帰って,必死になってコンピュータに打ち込んだと聞いているよ。その後,データロガーとコンピュータが接続され,現場で直接データを取り込めるようになった。
(新人)大変だったんですね。でもパソコンに取り込めるようになってからは便利になったんではないですか?
(課長)たしかにそうだね。それでも当時はフロッピーディスク・・っていってもわからないか(笑)。とにかく屋内で使うパソコンを屋外で使うから,トラブルが多く苦労は絶えなかった。
(新人)ところで,CPTをすると何がわかるのですか?
(課長)一般的な使い方は,先端抵抗と間隙水圧を用いて土層判別をしたり,先端抵抗から地盤のせん断強度などを推定したりすることに使っているよ(図-1)。軟弱地盤を対象とした調査において,ボーリング間の補間調査として使われることが多いね。
(新人)他にも使いみちがあるのですか?
(課長)昔はなかったけど,今ではコーンの部分に埋め込まれた計器によっていろいろあるよ。
例えば放射線源を入れて密度や水分量を測定するRIコーンとか,地震計を入れておき,地表部で起振することでS波速度を測定できるサイスミックコーン,電気を流す電極と電圧を測る電極をつけて,電気抵抗(伝導度)を測る伝導度コーンなど,目的によりいろいろ開発されて使われているよ。
(新人)いろいろできるのですね。でも静的に押しこむから,深くまで調査できないでは?
(課長)一般的なボーリングマシンを使ったりすればそうなるね。以前は貫入時の反力が確保できないために,小型バックホーを改良し,反力として鋼材を載せた貫入専用台車を使っていたこともあるよ。それでもN値10ぐらいが限界だったような気がする。
(新人)今も同じなんですか?
(課長)実荷重を反力にした貫入装置では,限界があるので,貫入装置自身でスクリューアンカーを打設し,それに反力を求める貫入装置があるよ。この装置ではN値40ぐらいまで貫入できるらしい。
(新人)すごいですね。そうなると,支持層確認調査にも使えそうですね。
(課長)CPTだけで完全に支持層を確認するのは難しいと思うよ。でも,標準貫入試験を併用してあげれば可能だと思う。
以前マンションの杭深度の問題があったよね。あの時は施工の問題もあったけど,調査密度の問題もあったと思うんだ。CPTの場合は静的に押しこむだけだから,調査時間が圧倒的に短いし,経済的といえる。だから我々も積極的に使って調査密度を上げることのメリットをお客さんに説明していくようにしたいね。