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技術ニュース85 免震と制震

今回は、地震時に発生するエネルギーが要因となって揺れる高層ビルや重要度の高い建物への対策として、よく用いられている『免震』と『制震』について少し話をしましょう。
まず、『免震』と『制震』の違いについて説明します。

免震とは

地面と建物の間に「免震装置」を入れ、建物を直接、地盤に載せるのではなく、浮かした状態にするのです。「免震装置」は、建物の重量を支えながら揺れを逃がす「免震支承」(積層ゴム支承、すべり支承、転がり支承などでアイソレータとも呼ばれる)と、地震によるエネルギーを吸収して建物を揺れにくくする「減衰装置」(鉛ダンパー、鋼材ダンパー、オイルダンパーなど)で構成されます。

制震とは※)

建物の骨組みの内部に部材を組み込み、地震の揺れに対して強さと減衰性能を持たせて建物の変形を抑える技術です。

「制震装置」には、壁状・ブレース状・柱状のものがあり、地震によるエネルギーを吸収するとともに、強風による建物の揺れに対しても効果を発揮して居住性を向上させます。特殊な鋼を使ったもの、高減衰ゴムを使ったもの、アクリル系材料を使ったものなど建築物の規模によっていろいろな組合せができます。

免震と制震について整理すると、“免震”とは揺れを建物に伝えにくくすることです。一方、“制震”は揺れを軽減することと言えるでしょう。なお、“耐震”とは建物骨組みで地震に耐える工法で、大きな地震などには建物の骨組みを損傷させてエネルギーを吸収させる仕組みとなっています。

次に、“免震”と“制震”のそれぞれの特徴について述べます。 免震(免震装置)は、地震のエネルギーを大幅に軽減することが可能な技術であり、建物本体の損傷や室内家具の転倒を防ぐといった点では、抜群の効果を発揮します。ただし、比較的頻繁に起こる震度Ⅲ程度の地震では作動しにくいといった現象もあります。 制震(制震装置)は、建物の損傷を軽減することは免震技術と同様ですが、もっとも大きな違いは小さな揺れから大きな揺れまで、広範囲な揺れに対して効果を期待することができることです。 免震、制震は、いずれも地震による建物の被害を防ぐ技術ですが、建物の規模や重要度によって、それぞれの特徴を生かし、免震装置や制震装置を適材・適所に用いることが肝要です。

最近では、既存の超高層ビルにおいて、長周期地震動や強風による長時間にわたる揺れが話題となっています。これに対し、建物頂部に設置した“おもり”の動きを利用して、建物の揺れを制御する技術も実用化され、実績を残しています。

※)制振とは地震や風を含む全ての揺れに対する包括的な概念のため,ここでは“制震”の表現としました


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